写真は石井工業株式会社本社のクスノキ(大楠)。剪定から1年後の姿。
樹木医による「私の好きな木」のリレーエッセイ第4回。今回取り上げるのは、千葉県香取市、佐原駅北口にある石井工業株式会社(創業122年)本社のクスノキ(大楠)です。
幹周357cm、樹高約8m。樹齢は150年以上と推定されるこの木は、もともと創業者の生家近隣にありました。その後、本社の移転に伴って何度か場所を移し、現在の地に根を下ろしています。
私がこのクスノキと出会ったのは、今の本社へ移植されたときでした。



以前の所在地は周囲が開けており、現在よりもずっと大きく枝を広げていました。
私は樹木医ですが、もともとは植木職人です。そのため、診断するだけでなく、現在も自分で剪定を行います。
剪定はおおむね3年に一度です。昨年剪定する前も樹形は十分に整っていましたが、近隣への落葉を少なくしたいというお客様の要望がありました。
そこで、葉を減らすために枝先をぶつ切りにするのではなく、樹形をなるべく変えないよう枝を選んで抜き、葉量を調整しました。強く切り詰めると、翌年に多くの枝が伸び、かえって枝葉が密になることがあるためです。
最初の写真は、その剪定から1年後の姿です。樹形はきれいに保たれ、枝葉も過剰に増えていません。
以前は開けた場所で自由に枝を広げていた木も、現在は市街地の中にあります。場所が変われば、樹木と人との向き合い方も変わります。
樹木のためだけでも、人間の都合だけでもなく、その間で折り合いをつけながら、その樹らしい姿を残していく。そのためには、実際の樹形をつくる植木職人としての技術と、樹木の反応や樹勢、病害虫などを見極める樹木医としての知識、その両方が必要だと考えています。
150年以上生き、何度か場所を移してきたこの大楠。これからも人の暮らしの中で立派な姿を見せ続けられるよう、必要なときには手を入れながら、末永く付き合っていきたいと思っています。
樹木医 H.S